おもてなしは豪華客船の学園で

第1話 どうして私⁉

〇海
  青く輝く海原を進む巨大な豪華客船。
桜N「海原を進む豪華客船は私立鳳凰学園の実習船・鳳凰Ⅱ」

〇鳳凰Ⅱ・船内各所
桜N「鳳凰学園は日本の『おもてなし』文化育成のために国家主導で設立された私立高校」
  学生が海外の人々を相手に接客をしているインサート。
桜N「船内は客船として乗客を受け入れる『客船エリア』」
  鳳凰Ⅱの屋外プール、レストラン、客室など豪華な船内施設を乗客が利用しているインサート。
桜N「学生が日常を送る『学園エリア』に分かれている」
  教室、体育館、中庭テラス、学生食堂、寮の部屋などで学生が学園生活を過ごしているインサート。
桜N「学園には『社交科』と『おもてなし科』があり、乗客相手にさまざまな実習を行って実践経験を積むカリキュラムとなっている」
  学生が乗客とラウンジで会話したり、ダンスパーティを行ったりしているインサート。
桜N「乗客には海外のセレブも多く、いわば豪華客船で短期留学並みの経験が積めると大人気の学園なのだが…」

〇鳳凰Ⅱ・客船エリア・プール
  饗庭 桜(あいばさくら/16)がプールサイドをブラシでガッシュガッシュと磨いている。
桜N「私、おもてなし科1年 饗庭 桜はそんな優雅さとは程遠く、実習費を稼ぐために昼休み返上でバイト中!」
  藍色の髪を後ろで束ねている。
  派手ではないが、華やかで品のある顔立ちの少女。
  芯の強さとどこか達観したような雰囲気がある。
テロップ「饗庭 桜 おもてなし科1年」
  同じくブラシ片手の佐原結衣(さはらゆい/16)・二見千夏(ふたみちなつ/16)がプールサイドのVIPエリアをうっとりと見つめている。
  制服姿のグループSメンバー(蓬莱大翔(ほうらいひろと/17)・小鳥遊 悠(たかなしゆう/17)・夏越 樹(なごしいつき/17)・飛渡 新(ひわたりあらた/17)・最上 愛(もがみあい/17))がくつろいでいるのが見える。
結衣「グループSの先輩方です。憧れます…」
  明るいブラウンのロングヘア。
  柔らかな雰囲気をまとっている。
テロップ「佐原結衣 おもてなし科1年」
  うっとりと見つめている。
桜「(冷めた目)へー、あれが噂の特権階級様ってやつか…」
結衣「仕方ありませんよ。学園は格差社会なんです。実習を含めた学業成績によってランク付けされます」
千夏「最上位のグループSともなれば、実習船の豪華装備使い放題、寮の部屋はスイート並み個室! 卒業後は学園推薦で進学は思うがまま‼」
  オーバーアクションで力説する。
  すらりとした体つきと黒髪のショートボブ。
  ボーイッシュな雰囲気がある。
テロップ「二見千夏 おもてなし科1年」
  結衣と千夏を横目で見る桜。
桜(心の声)「ていうか手を動かせ」
  グループSには関心ない様子。

〇同・VIPエリア
  プールの片隅の熱帯植物があしらわれたトロピカルな空間。
  グループSメンバーがソファでティータイムを楽しんでいる。
  紅茶に口をつける蓬莱。
蓬莱「不味い。まともな紅茶も入れられないのか」
  口元を歪める。
  黒髪で切れ長の目をした端正な顔立ち。
テロップ「蓬莱大翔(17) 社交科2年」
愛「贅沢言っちゃダメよ。おもてなし科の連中がカフェ実習で作っている程度なんだから」
  品よくティーカップを口元に運ぶ。
  ツンとした雰囲気の中にも育ちの良さを感じさせる。
テロップ「最上 愛(17) 社交科2年」
夏越「(クールに)不満ならコーヒーにすればいい」
  コーヒーカップに口をつける。
  清潔感のある黒髪のショートヘアに知性を感じさせる顔立ち。
テロップ「夏越 樹(17) おもてなし科2年生」
蓬莱「(うんざり)無粋な飲み物だ」
愛「大翔は苦いの昔から苦手だもんねー」
  意地悪な笑顔を浮かべて蓬莱をいじる。
蓬莱「それを言うな」
  わずかに恥じらいの表情を見せて、ぷいと横を向く。
飛渡「(屈託なく)でも大翔は紅茶のこだわり凄いよねー」
  幼さを残した顔つきにブラウンのクセ毛。
テロップ「飛渡 新(17) おもてなし科2年」
小鳥遊「学園を抜け出してお気に入りのティールーム『ブラガンザ』に通うほどにね」
  ニッコリと笑う。
  カシスレッドのロングヘアを後ろで束ねている。
テロップ「小鳥遊 悠(17) 社交科2年」
蓬莱「(驚き)なぜ知っている⁉」
小鳥遊「後をつけた」
蓬莱「趣味が良いとは言えないな」
  眉をひそめる。
小鳥遊「(クスクス)あんな変装して出かけていくんだから、どこに行くのか気になるじゃないか」
*  *  *
  本人と分からない変装して街中を歩く蓬莱のインサート。
*  *  *
蓬莱「(少しムッ)街中で学園の生徒に遭うと面倒だからだ」
小鳥遊「正確には女・子・学生! 『蓬莱さま、ご一緒させてください~』ってね」
  楽しそうに再現して身をくねらせる。
蓬莱「(うんざり)やめてくれ」
飛渡「(無邪気)大翔は大人気だからなぁ」
愛「節操のない女子って最低だわ!」
小鳥遊「あれ? あの子、ブラガンザのバイトの子じゃない?」
  デッキを掃除している桜に気づく。
愛「昼休みに何してるの、あれ?」
蓬莱「実習費が足りない学生は空いた時間にバイトに励むらしい」
愛「哀れね…」
小鳥遊「可愛いね。ブラガンザはあの子目当て??」
愛「はっ⁉ なにそれ大翔‼」
  大翔を睨む。
蓬莱「目的は店のオリジナルブレンドティーだ。確かにあの子は紅茶を淹れるのは上手いが」

〇同・プールサイド
  結衣と千夏が桜に熱く語る。
千夏「桜はSメンバーで誰推し!??」
桜「よく分からん」
桜(心の声)「興味ないし」
千夏&結衣「あ・り・え・ない!!!」
  大げさに驚く。
千夏「一番人気はリーダー格の蓬莱大翔様! 蓬莱財閥の創始者の一族のご子息‼」
  蓬莱がこちらを見ている視線に気づく。
結衣「こっち見てます‼」
千夏「私よね、私‼」
結衣「違います、私ですよ、私‼」
桜(心の声)「どっちでもいいわ…」
  冷めた目で見つめる。

〇同・VIPエリア
  桜を見た夏越が思い出す。
夏越「そういえば彼女、昨日の夜にルームサービス呼んだら来た。夜も実習なんだな」
  それを聞いて立ち上がる蓬莱。
愛「どうしたの、大翔」
  黙って桜たちのもとへと歩きだす蓬莱。

〇同・プールサイド
  桜のもとへと歩み寄る蓬莱。
千夏&結衣「蓬莱先輩!!!」
桜「(驚き)⁉」
蓬莱「君は今日の夜もルームサービス実習なのか?」
桜「そうですが…」
  怪訝な顔をする。
蓬莱「では本日19時にC402に紅茶を頼む。君が淹れてくれ」
桜(心の声)「私を指名?? 何で???」
  端的に伝えると背を向けてVIPエリアへと歩きだす。
千夏「どどどどういうこと!??」
結衣「ほほほ蓬莱先輩と知り合いなんですか???」
桜「全然‼」
  首を振る。
  ふと気が付く。
桜「あれ…でもあの人、もしかして……」
  何かに気づき、蓬莱の後ろ姿を見つめる。
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