魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!

魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!#3

◯大きなビルの前(夕方)

魔法少女姿のめると対峙する、敵組織の下っ端・グレイ。銀髪をオールバックにし、黒いコスチュームを身にまとい、赤い裏地のついたマントをはためかせている。

グレイ「来やがったな、魔法少女め!今日こそおまえをボッコボコに……」
透「魔法少女メルティーハート頑張れー!」

声がした方をギョッとした顔で見るグレイ。
透、めると目が合い、笑顔で手を振ってくる。
める、恥ずかしさで耳まで赤くなる。

める「恥ずかしいからやめろ!あと現場までついて来んな!」

T『魔法少女メルティーハート、初恋始めます?!』

◯帰り道(同)

閑静な住宅地。日が暮れかけ、ぽつぽつと電気がついている。

める「あのさあ……」

める、拳を握りしめながら、怒りを露わにする。

める「まだあのバカがあんたに手ぇ出してこなかったからよかったものの、なんであんなことしたわけ?!」

くどくどとお説教をされているのにも関わらず、照れた表情を浮かべる透。

透「心配してくれてるの?」

ついにブチギレるめる。

める「当たり前でしょ?!一般人を巻き込むわけにはいかないの!いい?!次からは絶対来ないで!」

鬼のような形相のめる。

透「うう……、わかったよ……」

透、がっくりと肩を落とす。

◯愛瀬家・リビング(夜)

スマホを片手に、ソファに寄りかかるめる。
テレビで他の魔法少女のニュースが流れている。
める、それをチラッと一瞬横目で見て、興味なさげにスマホに視線を戻す。
めるの隣に透が腰掛ける。

透「でもさっき恥ずかしいって言ってたけどさ、応援されんの嫌いなの?」

テレビの画面の中の魔法少女が、笑顔で取材を受けている。

める「(右手を頬に当てながら)うーん、そうねえ。ていうかそもそも、あまり応援された記憶自体がないっていうか。ほら、私って魔法少女らしからぬ魔法少女じゃない?」

めるのスマホが一瞬映る。

ネット民1『魔法少女メルティーハート、名前負けが酷い件』
ネット民2『あいつ、マジで愛想ないよな』
ネット民3『塩対応しか出来ないなら、ソルティーハートにしとけよwww』

める、イラッとした顔でスマホを閉じて、透に向かって人差し指を突き出す。

める「それにあんたみたいな物好きなんか、そうそう居ないもの」

透、指を指されて、勢いで仰け反りながらも不敵な笑みを浮かべる。

透「そりゃあ、もう何年も推してる筋金入りのファンですからね。メルティーハートさんのこれまでの頑張りをずっと見てきましたから」
める「うぐっ……」

面と向かって言われると、たじたじになってしまうめる。目を逸らしためるを横目で眺める透。

透(褒められてないんだろうな)
(褒めるとすぐ照れてかわいい)

くすくすとおかしそうに笑う透と、不満げなめる。

める「何笑ってんのよ!」
透「いや、別に……」

透、ひとしきり笑って、思い出したように語り出す。

透「でもめるって、今の今まで本当に俺のこと知らなかったんだね。俺、現場に行ったの、これが初めてじゃなかったんだけど……」
める「え?!そうなの?!」

める、ガバッと起き上がる。

透「やっぱり、推しは目の前で見たいじゃん?だから、何回も通ってましたねえ」

める、思い出そうとするが、全く思い出せずに断念する。

める「ごめん。……全然わからないわ」
透「(笑いながら)別にいいよ。推しに認知してもらおうと思って、通ってたわけじゃないからね。(突然、真剣な表情で)……でもやっぱり通っちゃダメ?」
める「……(手でバツを作りながら)推しに対する気持ちはわかるけど、ダメなもんはダメ!」
透「ですよね〜」

透、あはは……と、困ったように笑う。
2人が話している一方で、テレビでは取材に対応している魔法少女が語っている。

取材を受けた魔法少女「いやあ、皆さんの応援のおかげで、私たちは毎日頑張れてます!ただ最近、今まで出現していた型とは違う怪物の目撃情報が相次いでおりまして。危険ですので決して挑んだりせず、すぐに魔法少女協会へご連絡ください!」
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