となりの初恋
私なんかより目の前の恋している女の子に渡した方がいいだろう。


「いいよ、はい」


私はそう言って、手に持ったくじを前に差し出した。


好きな人の隣になりたいという心情はよく分からないけど、推しのライブの最前を取りたいという気持ちとあんまり変わらない気がした。


石川さんがゆっくり手を前に伸ばし、私の手のひらに置かれたくじを取ろうとする。


その時、だった。


「高橋さんが、隣?」


真後ろからかかった声に私は思わず振り返る。


「海斗くん、隣はうちで」
「あーそう。高橋さんかと思ったんだけど」


櫻井海斗はそう言うと、身を翻して自分の席に戻る。
クラスのみんなが机と椅子を持って移動し始める。


「ごめん、うちじゃ無理だ」


石川さんは手を引っ込めると、自分の席に戻っていった。
私は手に乗ったくじをポケットに突っ込み、がたがたと音を立てながら机と椅子を動かす。
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