人気アイドルと同居します!
♢♢♢

「終わったよ!」

階段を下りてみんなの所へ行くと、みんなは真剣そうにテレビを見つめている。

テレビに映るのは、昨日放送されていた歌番組でFastiのみんなが歌っているシーンだ。

Fastiのみんなのことを少しだけ知ってから見ると、ギャップがすごい。

かわいい春樹くんの歌声は、すごく色っぽくてつややかだ。

夏葵くんの自信満々なところは変わらないかも。

秋夜くんは、全然笑ってない。

でもその雰囲気が、踊りが、上手すぎて秋夜くんに魅せられてしまう。

冬真くんは、どんな激しいダンスでも、優しい微笑みを絶やさない。

しかもこの番組でFastiのみんなが歌っているのは、テンポが速くて激しいダンスをする曲だ。

「かっこいい…」

みんながちゃんとアイドルなんだと、改めて気がついた気分だ。

「おい、冬真、ポジション間違えただろ」

「…あはは、ごめん、夏葵。この曲ちょっと余裕ないんだよね」

え?間違ってるの?余裕がない?どこが?

すごすぎる。

こんなに完璧に見えるのに。

「あっ、美羽ちゃん!片付け終わったー?」

「終わったよ」

春樹くんがソファーを立ってこちらにやってきた。

そして私の手を取って再びソファーに座る。

…近くない?

春樹くんと私がすごく近い。

男の子とこんなに近くにいたことがない私は、恥ずかし過ぎて顔が真っ赤かもしれない。

「は、春樹くん、こんなにくっつかなくても…、」

「やーだ!僕は美羽ちゃんと一緒にいたいー!」

ギューッと肩に腕を回されてしまった。

茹でダコになっちゃうっ!

「ほら、春樹も程々にね」

「むー、冬真うるさい。冬真も美羽ちゃんと一緒にいたいんでしょー!」

そう言いながらもまわした腕は外してくれた。

まだまだ距離は近いけど、少しだけドキドキが落ち着いた。

「…あ、明日学校じゃん」

「あ、」

すっかり忘れていたけど明日から学校だ。

「やべ、俺ノートない」

「ねぇ、僕の制服知らない?」

え、制服なくすってどういうこと?

むしろどうやったらなくせるの?

「はぁ、じゃあ今日は学校の準備しないとだね」

ここで過ごす初日はみんなの学校の準備で終わりそうです…。
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