ビターなフェロモン (短)
言ってはいけない言葉を、言ってしまった。
蓮人くんの驚いた顔を見て「これ以上はダメ」って分かっているのに、蓮人くんの手をとって、自分の頬へ擦り寄せた。
「桃子……なに、言ってるんだよ」
「キス、して……キスして、蓮人くん」
そして、ちゅ、ちゅと蓮人くんの指にキスを落とす。
こんな私の姿を見て、蓮人くんはグッと下唇を噛んだ。
そして――
「どうなっても知らないからな」
呟いた後。
近くでゆらめくカーテンを捕まえ、私たちをバサリと覆う。
「桃子」
「んぅ、ぁ……っ」
そしてお互いの息が上がって、上がって、上がり続けて呼吸の仕方を忘れかけた時。
互いに飛んでいた「理性」を、私たちはやっと思い出したのだった。
ੈ✩