ビターなフェロモン (短)

「あ~だからさ、俺は充分に恩恵受けてるから。本当に気にするな」

「え、でも」

「やば、もう授業おわる。人が多くなる前に行って来る」

「ちょ、蓮人くん!」


もちろん狂言なんかじゃなくて、俺は本当にトイレに行った。といっても、なんとか気力でおさめたけど。

そして保健室に戻ろうとした、その時だった。


「あ、蓮人チョコいる?」

「いる、いっぱい」

「いやいや。一つだけな」


すれ違った友達が、なぜか気前よくチョコをくれた。

確かに甘党な奴だが、俺にくれるなんて珍しいな?――なんて思っていると。


「なんかしんどそうだから、チョコ食べて元気だせよ」

「しんどそう? 俺が?」

「顔が赤い。それに汗も。体操服、早く着替えた方がいいんじゃないか、風邪引くぞ」

「あ……おぅ。さんきゅ」


赤い顔に、汗って……。

さっき保健室での事がバレたのかと焦り、一瞬だけ固まる。
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