彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】

 うちの両親は彼の家の大きさを考えれば、氷室家の言う通りにしなさいとひと言だった。

 正直、結納のお金の心配もしていたが、そのあたりのことは彼とあとで相談するつもりだ。

 彼のお父様は氷室商事社長、お兄様は専務で次期社長。彼は次男でいずれ役員。

 今いる三橋は彼のお母さまの親族。社長は彼のいとこだ。

 彼はミツハシフードサービスに母親の旧姓で入ったが、近いうちに氷室商事へ戻る予定だ。ミツハシにとっても彼は戦力だったが、理由なくわざわざミツハシにいるわけがない。

 氷室商事の取引先の開拓などお父様の指図でミツハシフードサービスにいたのだ。戻れという指令が出て、彼は予定を繰り上げて様々な取引を進めている最中なのだ。

 私はミツハシフードサービスに入社しているのだから、彼と婚約したとしても、彼が氷室商事に転籍しようとも、本来はこの会社にいるべきだ。仕事が違っても結婚すれば戻る家は同じなのだから普通のことだ。
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