彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】

彼のご帰還

「相模君、僕の婚約者が大変お世話になったようだな」

 空港から直行してきた彼は、企画室のドアを開けるなり、つかつかと私の前に来た。

 そして横にいる相模さんへこの一言を最初に放った。私は頭にきて、立ち上がると彼に言った。

「俊樹さん、相模さんを責めるのはやめてください。責任はすべて私にあります」

 ちろりと私を見た彼。

「当たり前だ、俺の言いつけを守らない菜摘が全部悪い。何を勘違いしている?俺は相模に礼を述べているんだよ。商社について何も知らないどしろうとのお前に、短い時間でいろいろ教えてくれたんだ。しかもこんな背景が面倒な相手、俺だったら絶対嫌だからね」

「……!」
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