彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】

「俊樹さんは頭の回転が速いから、先々を見据えて指示を出してくるだろう。僕はそれに気づいてついていくのにやっとだった。君はそんな彼が認めて婚約までした。噂以上にすごい秘書なんだろう。達也君が君を秘書にしたいと言った理由がよくわかった」

 赤くなってしまった。菱沼さんに褒められるなんてどういうこと?

 彼こそすごいと他社の京子さんだって知っていた。俊樹さんもすごい秘書だと昨日も言ってたくらいだ。

「とんでもありません。菱沼さんのことは氷室商事でも有名でした。私など、足元にも及びません。でも俊樹さんをお預けしたので私は研修をしっかりできました。本当にありがとうございました」

「本当に残念だ。俊樹さんが戻るのは既定路線ではあるが、ここまでの人だったとは僕も一緒に行動するまで知らなかった。うちにとっては損失だ。ただ、うちのことを身内と思ってくれればこれからも助かるよ」
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