御曹司からの切望プロポーズ~妖艶で蠱惑的な瞳に迫られました~
『俺よりあの男のほうがいいのか? アイツが好きだから俺を振るのか?』
「半分はそうかな」
『どういう意味だよ』
「諒太と付き合っても、またダメになってたと思う。だから佑利さんは関係ないって言いたいところだけど、私が彼に惹かれてるのも本当」

 佑利さんに対して芽生えた気持ちを、“違う”と否定したくない自分がいた。
 彼が私を好きになってくれて、お見合いを申し込んでくれたのは事実だ。
 そんな真っ直ぐな彼に対して、私が真剣に向き合っていこうと思えたことも。

「諒太にはあの子がいるじゃない。ホテルで会った小柄なかわいらしい女性」
『あの子は会社の後輩。前々から言い寄られてたんだけど……魔が差したっていうか。全然本気じゃないんだ!』
「遊びなの? 真剣に付き合ってあげなよ。向こうは諒太が本当に好きなんだよ」

 咄嗟に意見してしまったが、心からの本音だった。
 身体の繋がりだけだなんて、会社の後輩とそんな虚しい関係を築いてほしくない。
 それでは彼女があまりにもかわいそうだ。

『奈瑠、俺がほかの女と付き合ってもいいのか? 本気で言ってる?』
「本気よ。わかったでしょ? 私、あなたにはもう恋していないの。これで連絡するのは最後にしよう」

 きれいごとかもしれないけれど、元カレと罵り合いたくはない。
 これ以上話をしても不毛だとわかるから、穏やかに電話を切ってこれきりにしたいのだ。

『……奈瑠はアイツと付き合うんだな』
「まだ考え中。でもひとつ言えるのは……私、新しい恋がしたいの」

 諒太にははっきり告げなかったが、その相手は佑利さんがいい。
 そんなふうに思うほど、佑利さんに対して急激に気持ちが高まってきている。

「だから諒太、もう電話もメッセージもしないで」
『……そうか。わかった』

 しつこくされたら最終的にはブロックせざるをえないけれど、そうなる前に話してわかってもらえるのが一番だ。
 さすがに諒太に対して“ありがとう”という言葉は出てこなかったが、「元気で」と最後に言って電話を切った。

 彼とはもう……二度と会うことはない。
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