空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~

『すみませぇん、ワザとじゃないんですぅ』


…この声……


「…どちら様ですか?」

『やだぁ、社長なのに社員の声が分からないんですかぁ?それじゃあ社長失格ですよぉ?』

「…誰かと聞いているのだが」

『分かんないならそれでもいいけどぉ。てゆーかお皿、割れたっぽいね。コンパに出すのなんでしょ?じゃあその女、もう詰んでんじゃん、ダッサ。てかさーそれってもうウチの会社もダメって「岸くんに変われ」

『えー、リナが喋ってんのに遮るとか何様ぁ?てか、なに偉そ「アンタがおバカ様なんだろーが!岸に変われって言ってんのよ!このスットコドッコイのバカ女がぁぁ!」

スマホを持ったキリがマイク部に向けて捲し立てると、向こうの音声がごちゃごちゃと不明瞭な雑音に変わっていった。


「さっすがキリたん、カッコいー!」
龍綺の言葉に那知も頷いて拍手してる。

ふ、わが妹ながら頼もしい奴だな。
…まぁ言葉遣いは少々あれだが…


あ、岸の手にスマホが戻った様だな。

『…岸です。すみません、スマホ取られて逃げられまして…』

「そうか、それは気の毒だったな。…では、ケガが大丈夫なら、そのままこちらに来てくれないか。警察への届け出はまた考えよう」

『分かりました。特急があと10分位で出るのですぐにホームに向かいます』

「あぁ、もし話せたらでいいが…堀田も来るなら来いと言っておいてくれ」

『分かりました。それでは急ぐので……あ、すみません。スピーカーオフでシノに変わってもらっていいですか?』

そう名指しされた那知がスマホを持ち、「もしもし」と出ると、向こうが小声なのかスマホを耳にぴったり付けた。

そして、「うん…うん…そうなんだね、分かった、みんなに伝えておくね」と言うと、通話を切った。


…はぁ…
これは想定外だったな…


通話が終わったのを見て、キリが口を開いた。

「やっぱ岸について来たのね、堀田リナ。でも…あの体格の岸が落ちるほどの衝撃って…」

「そうだな……とりあえずケガがなくて良かったが……岸くんには大変な役割をさせてしまったな」

「まぁ岸くんもその辺のリスクは承知の上だったしさ。だからこそ鞄を手放したんだと思うよ」


「あっ、それなんだけど。あのね、岸くん、わざと鞄を投げて大げさに落ちたみたい」

「え?那知、どういう事だ?」

「さっき最後に電話を変わった時に言ってたの。リナさんがついて来てたのも知ってて、何かしらのアクションを起こされるつもりで身構えてたから、って。でもあの落ち方はちょっとオーバー過ぎたかも、って言ってたよ。きっと今言っておかないと私達が心配すると思ったんだろうね。歩きながらのヒソヒソ声だったし、近くにリナさんがいたのかも」


「あぁ……そうだったのか」

すごいな、岸はそこまで考えて…

ほうっ…と、安堵と感服のため息が自然と出た。

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