空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
あっ、そうだ。


最後に、ここで〝会社の一員〞として2人にお知らせすることにした。

「すみません、1件、聞き捨てならない話を耳にしましたので、社長と林田さんにお知らせしておきますね」

『社長』と呼ばれた賢太郎さんが、それで何かを察したのか真面目な顔で聞き返してきた。

「那知、何があった」

「はい。先週の金曜日の夕方、リナさんが仰ってたんです。…この約2か月の毎週末、堀田部長が盛岡へ出張していた事になっていると」

「そ…れって……」
さすがに尚人もこれには青ざめた。
盛岡は尚人の出張滞在先だったからだ。


「…あぁ、なるほど。那知、ありがとう。それについてはこちらでも経理から聞いているよ。堀田部長からの出張旅費の申請が、宿泊費はなく交通費のみ、しかも2か月毎週だとね。管理職の出張とはいえ、さすがにこれは経理も怪しんでいたみたいでな。…まさかそれが娘に流れていたとは思いも寄らなかったが」

「……嘘だろ…まさかお義父さんがそんな事……僕はどうしたらいいんだ…」


ここまでくると、本当に尚人も悪い女(親子)に捕まったな、と同情にも似た気持ちが芽生えてくる。

…芽生えてくるだけで花は咲かないけど。


「それで、那知と仕事の話はもう終わってるのか?林田」

「あっ……は…はい…」


「ではもうここにいる理由はないな。那知、帰ろう。一度オフィスに戻るんだろ?一緒に行くよ。途中で何かあったら大変だし」
「何かって?」
「つるつるの廊下で転んだら大変だろ?」
「あはは、そこまでドジっ子じゃないよ。でも賢太郎さんてば過保護だなぁ」
「ふ、那知にだけな」


「では…林田さん、お先に失礼します」

「………」


返事もせず呆然としたままの尚人を残し、二人でミーティングルームを後にした。


< 55 / 189 >

この作品をシェア

pagetop