空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~

過去を胸に抱いて/side賢太郎



──話し終えたところで、勇貴さんが家族のアルバムを見せてくれた。


…小学生の時は髪が長かったんだ。
あどけなくて可愛いな。

これは中学の入学式だな。
はは、ぶかぶかの制服の初々しさが堪らない可愛さだな。

そっか、入学と同時に髪を短くしたのか。
長いのも可愛かったけど、今の短めのは那知にすげぇ似合ってるんだよな。

…あぁ、この辺は出逢った頃の那知だな。
ふ、やっぱ堪らなく可愛い…


なんて顔が緩みっぱなしのまま、中学生の那知を眺めながら想いを馳せる。


そっか……那知は俺に手紙を出す気でいてくれてたんだ…
それが知れただけでも嬉しいよ。


実はさ、俺も書いたんだよ、手紙。
那知からの手紙を待たずにフライングして書いたんだ。

あの、空色の懐紙に。

那知の住所は聞いてなかったから、いざとなったら建築事務所宛に出そうとか思ってた。

けど…いくら待てども那知からの手紙は来なくて…

もう…忘れられてたら…

もし…嫌われてたら…

とか考えだしてしまい、結局出せずじまい。


でも……

俺のあの時の気持ちを込めて書いた手紙を捨てることはできなくて…
那知を諦めることができなくて…

毎年、手帳を買い替える度に、その出すことのない手紙を真新しい手帳に移してるんだ。
もちろん、今年の手帳にも入れてある。


勇貴さんから話を聞くまでは、いつかこの手紙を那知に渡して、読んでもらおうと思ってたんだが…


…それは永遠に叶わないみたいだな。



というのも……

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