空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
…尚人が「今日は休め」と言った本当の理由。
それは朝礼で判明した。



「…あと、この度の東北セールスプロモーションでは、林田くんが頑張ってくれたお陰で、取引先からの注文数が格段に上がったぞ。林田くんは去年から少しずつ上がってきていたが、今年度に入ってグンと伸びてきているな。営業の皆は負けじと切磋琢磨してほしい。…お、それとだな、林田くんと受付の堀田さんが結婚するそうだ。林田くん、挨拶いいかな」


……は?
尚人が……結婚?

思わず隣にいる霧ちゃんと顔を見合わせた。


そこで尚人が前に出ると隣に堀田さんも並び……尚人が少し照れながら話し出した。

「この様な場をお借りしてすみません。私、林田尚人は、こちらの堀田リナさんと結婚することにいたしましたので、報告させて頂きます」

すると、すかさず堀田さんも話し出した。
「えっと、リナは尚人さんの奥さんになることになりましたぁ。それから、ママにもなる予定でぇす、ねっ尚人さん」


「林田、いきなりだな!」
「デキ婚~?」

「いえ、ちょっと前後しただけですよ」

「っていうか、2人が付き合ってるなんて全然気付かなかったよ」

「えぇ、まぁ…」

「今日のお仕事が終わったら、結婚届出すんでーす」

「堀田さん、それを言うなら婚姻届。まったく…結婚しても天然は変わらなさそうね」

「あ、いっけない、もうリナってばおバカで…もうちょっとお利口さんにならないと尚人さんに嫌われちゃう」

「いやいや、林田、こんな可愛い奥さんを嫌うことなんかないよなぁ」

などと前の方では楽しそうな声が上がっている。



それを私はオフィスの最後列から眺め、あぁ…そういうこと……と、全てに納得した。

ふと笑顔の尚人と目が合い、睨むでも笑うでもなく、ただ何の感情もなく見ていると、尚人はバツが悪そうに顔を逸らした。


皆に祝福されて、照れてるのか困ったように笑う尚人と、とても嬉しそうなリナさん。


…そして、人知れず…簡単に捨てられた私…


泣かない。
会社では絶対に泣くもんか。

皆の前では口角を上げるだけの笑顔を作り、祝福する真似事の拍手をした。
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