追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

「アンの腕は確かです。だから、アンを信じて治療をされてください。
 きっと良くなられますから」

「ジョセフ様……」

 まずい薬を飲んだばかりのお兄様は、涙を拭きながらジョーを見上げる。こんなにヘタレなお兄様を見られて、恥ずかしい限りだ。

「ジョセフ様は噂に聞くほど恐ろしいかたではないんですね!」

 そして、お兄様はさらに失礼なことまで言ってしまう。確かに、お兄様は伯爵家の子息ジョーよりも位が高いとはいえ……
 それでも、ジョーは静かに答えた。

「どんな噂が回っているか存じませんが、私はアンの味方です。
 ……アンが幸せになれるのだったら、何でも受け入れます」

「へぇー!ジョセフ様ほどの強者を手懐けるとは、アンもなかなかやるね!」

 お兄様はまたそんな失礼なことを言うが、私の胸はジョーの言葉に狂わされっぱなしだ。
 ジョーが好きだ。もちろん、お兄様のことは信頼しているし家族として好きだが……ジョーは違う。

 こんな私の甘い気持ちは、ジョーの言葉によって散々に打ち砕かれたのだ。

「ヘンリー様とポーレット領に帰ることが出来て、アンもきっと幸せだろうと思っています。
 私はアンにたくさん救われました。
 これから……アンをよろしくお願いします」


 私は、ジョーが引き止めるのを待っていた。だけど、ジョーは私がお兄様とポーレット領に行くことを望んでいる。結局、そこまでの気持ちだったのだ。



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