追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
強い彼が守ってくれました



◆◆◆◆◆


 俺はアンの馬車が視界から消えても、ずっとアンのほうを見ていた。

 騎士としてだけ生きてきた俺は、女性には興味がなかった。いくつか縁談を持ちかけられたりもしたが、あまりにも興味がないため断ってきた。結婚なんてすると、自分の自由な時間がなくなる、そして騎士としての仕事に影響をきたす。女性は、俺の足枷でしかなかった。

 でも……その身をなげうってまで、俺を看病して助けてくれたアンに、一気に恋に落ちた。生き延びるためには俺を捨てて逃げるべきだったのに、訓練もしていないその体で、オオカミの群に立ち向かった。この女性はどうして、何も関係ない俺をこうも大切にしてくれるのだろうかと思った。

 だけど、彼女の旅をするうちに、知らない気持ちが芽生え始めた。
 アンはいつでも俺が少し無理しようとするものなら、「まだ病人なんだから!」なんて俺を止める。そして、代わりに鳥を撃ったり魚を獲ったりしようとするが、当然出来るはずもない。だから俺が喜んで食べ物を捕獲した。
 彼女のぶんまで食べ物を捕獲し、すごいなんて喜ばれると、気付いたらにやけてしまっている自分がいた。
 俺はこんなアンの、純粋でまっすぐで、人のことを大切にするところに惚れたのだと思う。


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