追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる



「ジョセフ団長ーッ!!」

 急に訓練場に案内してくれた騎士の大声が聞こえた。それで私もジョーもビクッとなって、ジョーが私を離す。
 崩れ落ちそうになるのを必死で我慢しながら、まだまだ高鳴る胸をぎゅっと押さえた。

 ジョーがますます甘すぎて、不安でしかないほどだ。これから一緒にここに住むというのに、大丈夫だろうか。

 私はパニックを起こしているのに、ジョーは至って普通だ。いや、取り乱してはいないが、相当な殺気を感じる。
 私に背を向けたまま、低い声で騎士に告げる。

「喧嘩売っているのか」

 それで、後輩騎士も殺気立つジョーを見て、ビビってしまう。それでもジョーは容赦しない。

「俺に黙ってアンを連れ回して、挙げ句の果てに俺の醜態を見せつけるのか!
 事前に言ってくれればいいものを」

「だ、団長……すみませんっ」

 騎士は可哀想なことに、半泣きだ。だから騎士を守ってあげようかと思ったが……ジョーだって悲しげな顔をしているではないか。そんなに泣きそうな顔、しないで欲しい。弱い者の味方をするべきなのに、ジョーの味方をしたくなってしまうから。

 騎士はしゅんとして告げる。

「すみません……
 アン様がお暇そうだったのと、戦っているジョセフ団長を見ると惚れ直されるかと思ったので……」

 そう、まんまと惚れ直してしまった。ジョーは騎士たちから愛されていて、尊敬されていることを知って。なんてこと、言うとジョーが暴走しそうだから、言えるはずもないが。
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