ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?

8.僕の伝えたいことは

*****

飾らない綺麗な指先が、器用に動く様を見ていた。
角をとり、折りこみ、洗練された動きでもって、進物の包装を終えまいさんが僕に目を向けた。
「手順は、こんな感じ。とりあえずやってみて」
包装紙とお菓子の入った化粧箱を差し出され、僕はまいさんがしていた一連の作業を思い返しながら、同じように包装をした。
「……あんたって、本当デキスギくんよね」
あきれたように、溜息をつかれる。
……えぇっと、これは、褒められているんだよね?
遠回しなまいさんの褒め言葉に、にっこりと笑ってみせる。
「ありがとうございます。店長の教え方が、上手いからですよ」
「……セ、セロテープは、もう少し長めに切って、貼ってくださいね」
僕の反応に、思いだしたようにまいさんの口調が改まる。
動揺して上ずった声が、仕事用の高めのもので、なんだか微笑ましい。
「あの、店長? いま、僕たち二人きりなんですけど、それでもやっぱりこのままの接し方でなければ、いけないんでしょうか?
僕は一向に構いませんが、店長は逆に、すごくやりにくそうなんですけど。僕の気のせいですかね?」
ショッピングセンター館内にあるストックルームの一室は、『シャルル・エトワール』の工場で生産された焼き菓子の入ったコンテナと、店名ロゴの入った箱でほぼ埋め尽くされていた。
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