俺が貴女を護ります~エリート海上自衛官の溺愛~
「今は海上自衛官なんだっけ。すごいね」
「そんなことない。俺はただ、護りたい人を護れるようになりたかった。それだけだから」
「……そっかぁ」

 『護りたい人』というワードに、少しだけチクリとした。
いつでも真剣な眼差しの航平に見えるその護りたい人に妬いてしまうような。年齢に相応しくないこの感情に、グラスの氷をつついて誤魔化す。

「結芽は?」
「私は病院の窓口。医療事務ね」
「そうか。医療事務も大変だろう」
「いやいや~……自衛隊に比べたらそんな」

 結芽は残っていたチーズケーキをぱくりと頬張り、外に視線を移して咀嚼する。

(護りたい人がいるなら婚活なんてしなくていいじゃない)

 その護りたい人、というのが親や友人の場合だってあるというのに、結芽はすっかりその相手を恋愛的な方面ではないかと考えてしまっていた。

「どんな仕事であっても社会には必要だ」
「そうですねぇ」

 今思うと、航平は昔からこんな風に、真面目で真っ直ぐな性格であったような気がした。
 身長が高くてスポーツもできて足が速い。おまけに頭もいい。
 小学校ならモテ男の条件と言える。それなのにモテていた記憶がない。それは恐らく、当時子どもの世界では避けられるだろう真面目で慎重、冷静なタイプだからだ。
 悪く言えば、面白くない。よく言えばクールなのだ。
 小学校で人気のある男子というのは、お笑いセンスもあって明るい足の速いような。そういったタイプであった気がした。
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