契約シンデレラ
「ちょっと出かけてくるよ」

テーブルの上に広げた書類も、パソコンもそのままに着替えに向かおうとする圭史さんの慌てた様子に声がかけられなかった。

「遅くなるかもしれないが、待っていてくれるか?」

きっと何かのトラブルがあって、圭史さんは出て行くのだ。
今それが何なのかを聞いたところで私には何もできないのだろうから、口には出さない。

「はい。待ってますから、いってらっしゃい」

せめて疲れて帰ってくるだろう敬史さんに温かいお風呂とおいしい食事を用意して待っていいよ。
それで彼が少しでも休まるなら、それでいい。
この時の私には何のためらいもなかった。
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