子犬系男子は待てを知らない
えっと……。
「あたしは……特にいない、かなあ?」
「「うそー」」
思いのまま答えると、予想通り残念そうな声が大きく響いた。
「えー! 璃子ちゃん美人なのに、もったいない〜」
「いやいや、そんなことないって」
「そんなことあるよー!」
そうしてまた、あたしは頷くだけに戻る。
でもこれも仕方がないこと。
だって、恋はあたしには向いてない。
恋は当分、いいんだもん──。
***
「終わった〜」
4時間目の授業が終わる合図が鳴り響く中、あたし──藍原 璃子は、はぁ〜っと気の抜けたように机に倒れ込んだ。
長い50分だった。
苦手な数学だったせいもあるけど、今日は1時間目の体育のせいで、いつもよりお腹が空いちゃって……。
「璃子ちゃん、今日は俺の席でお弁当食べよー!」
「!」
届いた声にピクリと耳が反応する。
急いで身体を起こしたあたしは、胸まである髪を揺らしながら「うん!」と声の方へと振り返った。