子犬系男子は待てを知らない


「ごめん。でも、こうしたくて……」


優しくて、力強い温もり。

あたしは気づけばそれにぎゅっと縋りついていた。


「あたしほんとは平気なのにぃ〜」

「うんうん」

「ぜんっぜん、気にしてないのにぃ〜」

「うんうん」


今まで堰き止めていたはずの感情が解き放たれたように溢れ出す。


「大丈夫。大丈夫だから」

「っ、うっ……」

「我慢しなくていいんだよ。璃子ちゃんには、俺がいるから」


あたしが泣き叫ぶ間、雪平くんはずっと背中と頭を優しくポンポンと撫でてくれていた。

何も聞かずに。

あたしを全部受け止めるように、包み込んで。


そしてただ、ずっと。


「璃子ちゃん」


暖かい、春の陽だまりみたいな心地好い声が、あたしの身体に降り注いでたんだ。



……おかしいや。


さっきまであれだけ苦しかったのに。

そんなの嘘みたいに、全て溶けていった──。


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