毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「逃げてごめん。もう逃げない。結芽から目、逸らさない。間違っても何度でも私が連れ戻してあげる。私が居るからっ…一人で苦しんで勝手にダメになってかないでよ…!」

「ニカぁ………ごめんね…ごめんなさいっ…!」

廊下でわんわん泣きあう私達を怪訝そうに見ている生徒もいる。
ゆうれいまで感極まって本気で泣き出しちゃいそうだし…。

もう本当にバカみたいで、あんなに泣いたくせに、私もニカも抱き合っておかしくなって笑った。

「ちゃんと生きなよ。恥ずかしくない恋しな。ちゃんと好きなひとと幸せになる権利があるって私に教えてくれたのはあんたでしょ」

「私そんなこと…」

「教えてくれたよ。だから黒崎と私は一緒に居られるんだよ。今度は私が教えてあげるから」

「ありがとう。ニカ、大好き!」

ぎゅーってニカに抱きつく私に、ゆうれいが「あーっ!やっぱずるいな」って言った。

「悔しい。そこ、俺の場所だったんじゃないのっ!?」

「バーカ!」

ゆうれいにべって舌を出して、ニカがとびきり可愛い顔で笑った。

窓から桜の木が見える。
まだまだ満開じゃないけれど、きれいな桃色の花びらが風に吹かれて一定の速度で散っていく。

中学生の私も、去年の私も、
必死で恋をしてかっちゃんしか見えていなかったから、桜の色も見えていなかった。

大切な人達がこんなにも私を想ってそばに居てくれていたのに、
私はいくつ大事な物を見落としてきたんだろう。

「ありがとう。大切にしてくれて」

甘い恋だけをもう夢に見たりしない。
苦い恋だって正しく人を愛せる人になりたい。

毒に侵されて大切な人が苦しんでいるのなら私が癒せるように。

さよなら。
私の恋は、ここでさよならするね。

大好きだったひと。
あなたが誰よりも幸せになって、心から笑える日々を生きていく先で、
どうか私を忘れてね。


毒で苦い恋に、甘いフリをした。   完.
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