先輩のこと、好きになってもいいですか?
すれ違う心


  *


教室に戻ると、わたしはまた1人になった。

みんなからの視線が痛くて、すぐに目を瞑る。


先輩と過ごしたあの中庭がすぐに恋しくなって、もっとしっかりしなさいゆう、と自分で自分を叱る。


誰も話しかけてこないけれど、明らかに登校してきた時とは違う。

みんなわたしの様子を窺っていて、先輩に連れ出された理由は何かと、それだけが知りたくて仕方ないという顔をしている。


そわそわとしたこの空気が耐えがたかった。


うう~、今すぐにトイレに駆け込みたいよお。


こんなことを学校で思ったのはもちろん初めて。

……ではない。


トイレが近くなる時や、急にお腹が痛くなる時なんかは中学校でもあった。

だけど、この場にいるのがあまりに辛くて、という理由でトイレに駆け込みたいと思ったことはない。


我ながら変なたとえをするのが得意だな、と自分のことなのにどこか遠目で思った。


「美辺さん、和泉先輩に連れ出されてたけど、どんな用事だったんだろう……」

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