先輩のこと、好きになってもいいですか?


視線を窓の向こうに広がる青空へ移す。


「はぁ、……」


おれのため息の後から、バン! と強く教卓を叩く音がしてぎょっとした。


「なんだ和泉!! 俺の授業がそんなに退屈だというのか!! 真面目に受ける意思のない奴は今すぐ出ていけ!!」


あー、相変わらず被害妄想激しい教師だなあ。


そう、他人事のように思う。

重い体を起こして、席を立つ。


そしてそのまま教室を出て行こうとした。

……すると。


「おい待たんか和泉!! 出て行けと言われて本当に出て行く奴がおるかアホ!」


いやどっちだよ。

そう心の中で毒づいた。


「あれ、せんせーに命令されたはずなんだけど、なんで怒るんですか?」


おれはわざと先生が怒るように仕向けた。

大人は1度怒りの渦に巻き込まれると、そこからどうしても抜け出せなくなるから。


相手の冷静さを欠くことで、自分は悪くないのたということを浮き立たせる。

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