本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。


 真潮は怒るとすぐに大声で怒鳴る。
 それが嫌でなるべく怒らせないようにしてるのに、思わず踏み込んだことを言ってしまったがために苛立たせてしまった。


「連絡しなかったのは俺が悪かったけどさ、浮気疑われるのは心外だわ」
「……ごめんなさい」
「はー最悪。もう寝る」
「あ、真潮……!」
「あ?」


 冷たい視線に冷たい声。
 まるで煩わしいものを見ているような表情に、私は何も言えなくなってしまった。


「何でもない、ごめん」
「寝る」


 バタン!という扉を閉める音が静寂の中で響き渡る。
 私はその場にポツンと佇み、必死に涙を堪えた。

 いつもこうだ、喧嘩したくないのにいつも真潮を怒らせてしまう。怒られるのはいつでも私。

 正直真潮の言葉を信じてはいない。
 だって明らかに怪しい。そう思うのに私は言いたいことの一つも言えない。

 真潮のことは好き。何だかんだで優しいんだってわかってる。
 だからこそ真潮のこと信じたい、信じさせて欲しい。


「……っ、うっ」


 四年も一緒にいるのに、一緒に生活しているはずなのに、どうしてこんなにも真潮との距離が遠く感じるのだろう。
 同じ家に住んでいるはずなのに、同じベッドで寝ているはずなのに、独りぼっちだと感じるのは何故なのだろうか――。


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