本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。


 その瞬間、この場にいた女子たちがザワッとするのがわかった。鷹宮くんが来るとわかり、小さくガッツポーズをしている子もいる。


「ほんとですか〜!!楽しみにしてますね〜!」


 小鳩さんもわかりやすくテンションが上がっている。


「では、また後ほど」


 鷹宮くんはクールにそう言うと自分のデスクに戻って行った。

 鷹宮くん、なんで私が行くのか聞いたんだろう……?
 私が行くなら、って風に聞こえたけど、まさかね。

 それよりも真潮に連絡しなければならない。
 怒らないで欲しいと祈りながら、「今日は飲み会なので遅くなります。ご飯作れなくてごめんなさい」とメッセージを送信した。

 しばらくして「大丈夫。行ってらっしゃい」という返信があり、ホッと胸を撫で下ろす。
 良かった、もう怒ってないみたい。

 それから気持ちも軽くなって、定時で仕事を終わらせて飲み会に向かった。
 行く前にトイレに寄ったら、みんな鏡の前で化粧を直していた。

 私もファンデーションと口紅くらい直した方がいいかなと思い、手を洗った後に化粧ポーチを取り出す。

 昨日買った赤のマットリップは結局付けなかった。でもポーチの中には入っている。

 真潮には似合わないって言われちゃったけど、どうしよう。
 せっかくだから付けてみようかな?
 やっぱり変って思われちゃうかな……。

 悩んだ挙句、気合いを入れていると思われても恥ずかしいので結局いつものサーモンピンクのリップを引いた。


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