本気を出したクールな後輩は一途な盲愛で攻め落とす。

エピローグ



 俺はTMホールディングス社長の息子でありながら、TMの子会社、グループ会社には入社しなかった。
 父には昔から会社を継ぐように言われていたが、自分自身の実力を試したくて敢えてオウルフーズを選んだ。
 俺がTMホールディングスの御曹司だということは社内でもごく一部の人しか知らない。色眼鏡で見られるのが嫌だし、俺は俺として見て欲しいから余計な肩書は不要だった。

 営業部に配属され、李愛さんと出会った。
 営業部のサポート業務を担当してくれているオペレーション部の中でも、仕事の速さと正確さで一目置かれている先輩だった。

 誰に対しても物腰柔らかく、一つ一つの仕事が丁寧でホスピタリティに溢れた人だった。
 俺が彼女に惹かれたのは、ある付箋がきっかけだった。

 とある案件で李愛さんに企画書作成をお願いしていたが、俺の伝達ミスがあった。そのことがわからないと企画書が作れないのに、その日は朝から外出してしまっていた。
 帰社したのは夜遅くになってからで、オフィスには誰もいなかったが俺のPCに一枚の付箋が貼られていた。


「例の企画書について、わからないところがありましたがこちらの判断で一旦作成させていただきました。
修正あれば対応しますので、戻られた時に確認してください。 糸金」


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