突然シンデレラ~王子様は実在しました~
溺愛王子様
 専門学校の卒業式ーー

 入学式も一人だった。そして実家を出た今、母には知らせていない。どうせ知らせても来ることはないだろう。

「希々〜、学生生活も終わりだね」
「うん、いよいよ社会人だね」
「希々は結婚までしちゃって……。何人も失恋を嘆いてたよ」
「麻智は相変わらず冗談が上手なんだから」

 卒業式が終わって、ピロティで話をしている時だった――

 やけに周囲がざわざわと騒がしい。

「何?」
「ちょ、あれ!」

 麻智が指を指した方に視線を向けると、大きな花束を持った王子、いや雪哉さんがこちらへ向かってきた。

「えっ……」

 どうしてここにいるのだろうか。今日が卒業式だとは伝えていない。

「おめでとう」

 私の目の前まで来て、極上の笑みでお祝いの言葉を言いながら、花束を渡してくれた。

「ありがとう。どうして……」
「祝いの日に、来るのは当たり前だろう?」
「えっ、でも仕事が」
「希々以上に大事な仕事なんてない」

 興味津々で見ていた人達から感嘆の声が上がり恥ずかしい。
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