突然シンデレラ~王子様は実在しました~
 ――チンッ

 夕食の準備をしていると、エレベーターが到着する音が聞こえた。いつも雪哉さんの帰りは遅く、こんなに早く帰って来ることはあまりない。慌てて玄関へ行くと、雪哉さんの姿があった。

「おかえりなさい。早かったね」
「ただいま。ああ……」

 いつもの温和な顔ではなく、何か含みのあるような表情だ。私に関係のあることなら、隠さずに話してくれるだろうと、敢えて明るく声を掛ける。

「夕食にする? お風呂に入る?」
「風呂に入ってくる」
「じゃあ、上がったら食べられるようにしておくね」
「ああ、ありがとう」

 私の頭を軽く撫でて、バスルームへと行ってしまった。明らかに元気がないように感じる。
 
 卒業式の日に大人の関係になってから、 敬語は止めてより親密になったけれど、まだまだ知らないことも多いのだ。

 料理の仕上げをしていると、バスタオルを首にかけた雪哉さんがリビングへと入ってきた。サラサラの髪が、まだ濡れていて色っぽい。
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