突然シンデレラ~王子様は実在しました~
 結局父は逮捕され、母と妹は母方の田舎へと引っ越したと聞いている。何もかも雪哉さんが処理してくれて、結局私は詳しく知らないまま終わった。

 本来ならニュースになってもおかしくないけれど、大事にならずに済んだのは雪哉さんのお陰なのだろう。もう、完全に家族との繋がりはなくなった。

 仕事の方も週の半分を在宅勤務にしてもらえて、恵まれた人間関係に感謝しかない。

 ずっと、辛い生活をしてきたのが嘘のように、恵まれているのだ。

「雪哉さんは、男の子と女の子、どっちがいい?」
「元気に産まれてきてくれたら、どっちでもいい」

 優しい顔で私を見ている雪哉さんは、私が砂浜でこけないように、しっかりと支えてくれている。

「希々」
「ん?」
「生まれてきてくれてありがとう」
「雪哉さん……」

 子供の頃、何で双子だったんだろう? 蘭々だけで良かったのに……

 そんな風に何度思ったことか……

 私の存在価値はあるのか?

 たくさんの哀しみと葛藤の中を耐えて来た。
 
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