夜の帝王の一途な愛
「今麻生さんが記憶していることは二年近く前の事です、ごめんなさい、赤ちゃん流産しました」
「そうか、いろんな事がごっちゃになっているのか」
「頭痛が改善されると記憶も元に戻りますって」
彼は考え込んでいた。
「あまり気にしない方がいいみたいですよ」
「俺は二年間あゆみをちゃんと守っていたか流産してしまったあゆみにちゃんと寄り添っていたか?」
「大丈夫ですよ、ずっと側にいてくれましたよ」
「そうか、それならいいけど・・・」
彼はしばらくの間店を休むことになった。
記憶の混濁に不安を隠しきれない様子だった。
しかし次の日の朝、記憶の混濁は嘘のようにいつもの彼に戻り、記憶の混濁があったことなどすっかり忘れた状態だった。
そんな状態がしばらく続いた。
私は不安が無いと言ったらうそになるが、彼に向き合って対応して行こうと決めた。
そう思わせてくれたのは、彼がどんな時もどんな状態になっても必ず「あゆみ」と私を忘れないでいてくれる事が嬉しかった。
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