夜の帝王の一途な愛
「この間一緒だった、加々美に大事にしてもらえよ」

あゆみはこの時、凌の記憶が戻っていると察した。

「凌、記憶、戻ったの?」

凌は慌てた。

「戻ってねえよ」

「それならなんで加々美社長の名前口にしてるの?」

凌はあゆみから身体を離した。

「お前があいつの車に乗り込むところ見たんだよ、それで調べたからわかったんだ、
花屋の社長だし、きっとお前を大事にしてくれるぞ」

あゆみは愕然とした。

凌からそんな言葉聞きたくなかった。

あゆみは上着をきて、凌の部屋を後にした。

凌は引き止めたい気持ちをグッと堪えた。

これでいいんだ、これで……

あゆみは泣きながら、とぼとぼ歩いていた。

私は凌にとってそれだけの価値しかないんだ。

二人で乗り越えていこうって、私は思っているけど、凌は私を巻き込みたくないって思ってる。

それも愛情なの?

我慢して、諦めることも相手を思いやるってことなの?







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