夜の帝王の一途な愛
麻生さんの病状ですが、脳腫瘍です。二年前にご本人には伝えたのですが、手術を受けずに薬でとの希望でした」
彼はやはり病気だった、とても難しい場所にある腫瘍だった。
「手術はリスクを伴います。たとえ成功しても認知機能障害など、後遺症の覚悟はして頂く必要があります」
心臓の鼓動が早くなり、どうして良いかわからなかった。
「薬で完治する事は、大変難しいと思われます」
「手術はリスクを伴い、薬は完治が難しいなら、どうすればいいんですか?」
大変な決断を余儀なくされ、彼の人生の選択をしなければいけない私は先生を責めた。
 私は少しの間時間を貰う事にした、そして
病室でしばらく彼の寝顔を見ていた。
手術は希望していない、だけど成功すれば生存率は上がる、だけど私の事忘れちゃう可能性は高いのだ。
彼と私の出会いは奇跡だと思っている、奇跡は一度しか起きない、だから奇跡って言うのだから・・・
彼が私を忘れて、また好きになってくれる可能性はゼロに近い、いや、たぶんゼロだろうなあ~。
 私は先生の元へ向かった。
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