私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

変わり始めた世界


 ”朝からごめん。俺達別れよう”

 優悟君から、そんな短いLIMEが早朝に届いた。
 不思議とそれを見ても、私の感情は無だった。
 私はすぐに”わかった”と、優悟君のよりもはるかに短いLIMEを返して、私たちの関係は終わった。

 結局昨夜遅くまで、和泉主任は私の仕事を手伝ってくれた。
 どうにか今日の会議に間に合うことができたのは、主任のおかげだ。

 たくさん泣いて、たくさん話を聞いてもらって、私の中でそれが一つのきっかけになったような気がした。
 自分を変える、きっかけに。

 私は主任に壊された伊達メガネを鏡台に置くと、丁寧に化粧をし、長い髪を整え、パチンッ、と両頬を自分の両手で叩いて気合を入れた。

「よし。大丈夫。私は、私の人生を大切にする」
 そう、チェストの上の母の写真に目を向け、微笑んだ。

「お母さん……。行って来るね」
 そして私は、鞄を手に家を出た。

 

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