私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~

二人きりの出張


「はっはっはっはっはっ!! ほなら、これからの共同事業の成功に!! かんぱーい!!」

 ……あぁ、これで何度目の乾杯だろうか。

 無事京都支社との会議を終えた私と主任は、今、支社の偉い方々との飲み会に参加している。
 まぁ、接待というやつなんだろう。
 高そうな祇園のお座敷で美味しい懐石をごちそうになる贅沢。

 ただ、このノリだけはついていけない。
 元々部署内でも孤立していたし、大人数で飲みに行くという習慣がない分、どうも気疲れしてしまう。

 それに──。

「和泉さん、ご結婚は?」
「していません」
「えー、彼女はいらっしゃりまへんの?」
「いません」
「じゃぁ私立候補したいですー」

 ハーレムだ。
 ハーレムが出来ている。

 何故コンパニオン呼んだ?
 お座敷といえば舞妓さんじゃないの?

 主任は取引先の呼んだコンパニオンのお姉さんに取り囲まれてハーレム状態。
 方や私はおじさんたちに取り囲まれて浴びるように酒を呑む。

 なぜだろう。
 主任のハーレム状態を見ていると、胸がチクチクする。
 呑みすぎた?
 それとも、いっちょ前に嫉妬してる、とか……?

 いやいやいやいや!!
 相手は鬼の主任よ?
 そんなわけが……。






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