【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 まったくもって、困った旦那さまだ。
 でもどんな彼でもおしなべて愛しいと思ってしまうのだから、リーゼも大概である。
 

「今日、ランドルフ様と踊るのを楽しみにしていたんです。だから帰るのはいやです」

 次期伯爵夫人としての役目を果たすのはもちろんだが、リーゼはひそかにランドルフと踊るこの機会を楽しみにしていた。

 舞踏会で、想いを交わしたお姫様と王子様が幸せそうにダンスを踊る――幼い頃、何度も読んだ絵本のワンシーンに、リーゼはずっと憧れを抱いていたのだ。今日くらいは自分をお姫様に見立ててもバチはあたらないだろう。

 騎士団の業務に追われて夜会になかなか参加できないからこそ、今日のこの機会を逃したくはなかった。
 はにかむリーゼにランドルフは優しい目を向けてくれる。

「可愛い君の願いなら叶えないわけにはいかないな。今日、俺が踊るのはリーゼだけだ」

 見下ろす瞳は真っ直ぐにリーゼを捉えていた。片時も離さないと雄弁に物語っていて、リーゼの胸が再び高鳴る。
 ありあまるほどの幸せに満たされながら、リーゼは彼の胸に頬を寄せた。
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