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「だーかーら、隣町の先崎総合病院のこと!」

「……あ。そうだったね」

「うちのパパの知り合いが、そこで雇われの外科医してたんだけど、院長が変わって、急に解雇とかされちゃったみたいで。あそこの病院、今、かなり問題発生してるらしいよ」


芽蕗が、怪談でも話すような神妙な顔つきになる。


「院長が変わって、体制? も変わってから、重症化した患者とかも結構いて。医療過誤とかも起きてるんじゃないかって。日彗も想葉も、もし病気とか怪我しても、あそこには行かないほうがいいからね」

「やだ、こわい。お父さまの知り合いの方は、大丈夫なの?」

「それがさ、日彗、やさぐれちゃって、なぜか何も関係ないうちのパパとキャバクラ三昧! ママはもう怒り通りこして、呆れてる」

「隣町、いま荒れてるよね」

「想葉、やっぱり?!」

「私も、お母さんからちらっと聞いたけど、新しくできた大型ショッピングモールの不買運動がすごいらしくて。できたばかりなのに、潰れるんじゃないかって。たぶん組織的なものだろうけど、記事にしてもお金にはならなさそうって、ついこの間、言ってたよ」


好みではない桜のシフォンケーキをちびちび食べながら、今度はふたりの話に真剣に相槌を打つ。

香りのいいダージリンの紅茶を啜って、これは月臣の好きな風味だと思った。



あらゆる業界で顔が広い名医の父を持つ芽蕗は、生粋のゴシップ好きだ。

よく似合うツインテールを揺らして、可愛い顔に様々な表情を浮かべながら、いつも早口で話しまくる。

いわば、歩く週刊誌。


想葉は、それこそ有名な某週刊誌の編集長を母に持ち、父の方は家系が槐家の遠い遠い親戚にあたる。

本人は、さっぱりとした美人さんだ。



高校のクラスが同じで、気がついたら仲良くなっていた私たち。

なんて、そういうことではなくて。ふたりは、純粋にわたしを友人だとみなしてくれているのだろうけど、そうなるべくして「友人」になったという方が、きっと正しい。


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