ももちゃんとUMA

ももちゃんの姉

 ある日の帰り道、有誠は路上で不審な黒服にタックルされた。咄嗟に腕を掴もうとするが、するりと逃れられてしまう。黒服は言った。

「へっへっへ……元気そうだなユーマ」
「有誠です」

 極めて不快である、と有誠の横顔には書いてあった。
 全身黒服、ショートヘアを何色というのかわからない色に染め、耳にはピアスをいくつも開けた長身の女。
 ももちゃんの姉、桜山さくらである。

「酒臭いので寄らないでください」

 決してさくらとは目を合わせない。

「今日もつれねえな。なあ? ももと仲良くやってっか? もう付き合ってんだろ?」
「俺はももちゃんに言い寄ったりしていない。セクハラはやめろ」
「なんだ付き合ってねえのか」

 ずずっと音を立てて、さくらはストローから酒を吸い上げた。ストローで飲むと早く酔いが回る気がするのだと以前言っていた。

「トロくせえな。おい、ちょっと飲むか? 酒の力借りれば告白の一つや二つ」
「警察呼びますよ」

 じょーだんじょーだん、じゃあな、と言いながらさくらは飲屋街の方角に消えた。戻って来なければいいのに、と有誠は思った。

 そこへ、関がおずおずとやって来た。さくらに人見知りして、近寄るのを迷っていたのだ。

「あっあっ、有誠くん、あのめっちゃ綺麗なお姉さん、誰? ていうか何?」
「どこが綺麗なもんか。あれはももちゃんの……人生のお荷物だ」
「どういう意味」

 姉、と言うことを脳が完全に拒絶した結果だった。
< 10 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop