サクラジンクス
ドキドキと高鳴る胸を感じながら暖が言うと、千束が距離を詰めてきた。暖の顔は一瞬にして赤く染まり、慌てて距離を取ろうとするものの、素早く千束に腕を掴まれてしまい、叶わない。

「……せ、先輩?」

「君とならしてもいいって思ったんだよ」

「何をですか?」

聞かなくてもわからないことを訊ねてしまう。千束は妖艶に微笑んだ後、暖の唇に指でそっと触れた。

「キスに決まってるでしょ?」

春風が二人の頭上に桜の雨を降らせていく。暖が顔を真っ赤にしたまま固まっていると、千束の顔が近付いていく。

暖の心は憂鬱を忘れてしまった。












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