今宵、君を奪い去る
僕は、人もまばらな真夜中のバスターミナルで、ずっと好きだったあの娘のことを待っている。

手には2人分のチケット。

行き先は、あの娘が行ってみたいと言った僕の故郷。


「そんな…急に言われても、私…」

「ごめん。困らせてる自覚ならある。困らせるのは判ってるから、何年も黙ってた。でも、どうしても君をアイツにだけは譲れない」


そんな会話で、あの娘を追い詰めてしまった。

しかし、アイツのことなら僕もよく知っている。

単に馬鹿騒ぎする友達としてならともかく、恋愛となれば話は別だ。

恋人失格と言っても過言ではない、根っからの浮気性だということも。
< 1 / 14 >

この作品をシェア

pagetop