その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜

51 唯一*

「っ、ぁあっん、ぁっあああ!」

 じゅぷじゅぷ、くちゅっと部屋の中には、先程唇を合わせていた時以上の卑猥な音が響いている。

 秘所の中に埋め込まれた彼の長い指が良い所を刺激するたびに、私はたまらず身をくねらせて、腰を浮かせる。

 彼から与えられる止めどない快感の波。片手をシーツに縫い留めるように握られて、上からじっと彼に見下ろされてイヤイヤと首を振る。
 こちらはさきほどから何度か達して、熱に浮かされて蕩け切っただらしのない顔をしているのに、彼は涼しい顔でただただ自分に翻弄される私を見下ろして。

「ティアナっ」

と、なぜか満足そうに名前を呼んで微笑んで、首筋にチリチリと唇を落とし跡を残していく。

 そうしながらも彼の責めるような愛撫は終わることがなくて。

「っふぁっ! まっ、て……またっ!」

 一度達したその場所に、またじわりじわりと熱が急速に上ってくる。無意識に握った彼の手に力を込めると、私の中を蠢いているもう一方の指が的確にわたしの弱いところをすりあげはじめてーー


「ぁっあああっーー! っあんんッ、ぁっはぁああっだっめぇえ!」

 ひくんとはしたなく差し出すように腰が浮く。自分のものではないように思えるほどに、乱れたそこは、彼の指を飲み込んだまま、さらに蜜を溢れさせている。

「っ、ぁぁっ、ぁっ、ぁあ」

 彼の指がゆっくり引き抜かれて、達しきったわたしの腰もピクンピクンと痙攣する

 はぁはぁと荒い息をしていると、彼の唇がそれを阻むように重なり、すぐに舌が入ってきたかと思うと、丁寧に口内を舐め尽つくす。震える舌を恐る恐る絡めると、今度はこちらが、ちゅぷちゅぷと、はしたない水音を立てる。

つっと銀色の糸が離れた2人を繋いで、儚く消えると、涼しげだった彼の息も上がっていて。

 少し上気したその顔がやたらと官能的で、ぼんやりとそれに見惚れていると、視線を近づけた彼がふっと柔らかく微笑んでチュッと軽く啄むようなキスをした。

「ティアナ」

 もう一度呼んで、汗ばんだ私の額にかかった前髪をかき上げると、露になった額に口付ける。

 今日はどうしてこんなにも彼は私の顔をみつめて、名前を呼ぶのだろう。
不思議に思うけれど、散々彼に翻弄された後の私の思考力なんてないに等しい。



+++

「っ、ぁっ・・・もうだめ・・・っ!」


 たまらない場所を打ち付けられて、また私は達して縋るようにシーツを引いて首を横に振る。

「っ……」

 私を見下ろす彼の顔も苦し気で、彼の荒い息と耐えるように漏れだす声。
彼が私で感じてくれている。
それがとても嬉しくて、あぁだからさっき彼は私を見つめていたのだろうか。
 
 私が彼の感じる様子に嬉しくなるように、彼も思ってくれていたなら、いいのに。

 そんな事を考えていると、彼が唐突に身体をぴたりとくっつけてきて抱きしめられる。

「あぁっ!」

ぐんと奥を擦り上げられてたまらず声を上げる。
キュッと肉壁が彼を締め上げる。

「くっ……」
彼がビクリとわずかに反応をして、一拍おいて長く息を吐いた。

「ティアナ」


「んっ、んんっ、あっ!」

ギュウッと強く抱き寄せられる。たまらず彼の背に手を回してしがみつくように抱き返せば

「君以外、あり得ない」

と囁いて

その言葉に「っえ⁉︎」と私が聞き返すのと、彼が少々乱暴に抽送を再開したのは同じタイミングで


あり得ないって、私以外って、どういうこと!?

その意味を聞がなければと思うのに、的確に私の弱い場所を打ちつけて来る彼の余裕のない動きに


「っやぁ、んっ、まっ、てぇっ!ぁああっーーあぁっ」


 チカリチカリと視界が瞬いて、深く考えることを放棄せざるを得なかった。

 派手な水音と私達の呼吸が響く。
肌と肌が擦れ合う。互いに汗ばんでいるのに、なぜか触れ合う互いの肌が心地いい。

 私の中の彼が大きくなって、耳元で彼が小さくうめいて、熱い吐息を吐いたのと、それが弾けてどくどくと脈打つのは同時だった。


「っ、ティアナ」
まるでうわごとのようにそう呟いた彼が、私の頭を包むように撫でて、はぁと荒い息を吐く。

まるで、まだ逃がさないと言うように彼の身体にすっぽりと閉じ込められて。ぴたりと肌を重ねたまま抱き合った。


なんだかとても求められて、愛されているようなそんな錯覚をしてしまいそうな抱かれ方。


「君以外、あり得ない」と囁いたあの言葉はどう言う意味なのだろう。

 愛人や妾をもつつもりは無いと先程ボートの上で言ってくれたあの言葉と同義なのだろうか。
 でも少し含み方が違う気がする。
こういう事をする相手が、と言うことだろうか?


 思い切って聞いてしまおうか? そう思った矢先に、彼がゆっくりと身体を起こして、こちらを見下ろしてきた。

その瞳には、まだあの艶かしい光が残っていた。
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