闇を抱える小さい少女
花鈴ちゃんの部屋を後にしてから、デイルームの椅子に座っている1人の警察官の隣に腰を下ろした。


この人は、花鈴ちゃんの救急車に同乗してきた俺の昔からの親友でもある『今野大和(こんの やまと)』だった。



「なぁ、大和。一体、何があったんだよ。」



花鈴ちゃんの病室の前には2人の警察官が立っていた。




「俺にも…詳しいことは分からない。当事者である、彼女にしか分からない。


これは、あくまでも俺の推測だけど…



あの子は、母親を守るために自らの手を殺めてしまった…。」




「それって…まさか…。」




「正当防衛だ。


あの子の母親は今、別の病院で見てもらっている。自殺に失敗して意識を失っている状態だから、目を覚まさないと詳しいことは聞けない。


本当の真実はよくは分からない。


けど、これだけは言える。


彼女のしたことは、彼女がちゃんと話してくれない限りは罪に問われるべきなのか分からないってことだ…。


彼女の母親も全身が傷だらけだった。その傷が飛び降りだけで出来た傷とは思えなかった。


もしかしたら、DVをされていたのかもしれない。


それに、花鈴ちゃんも。彼女もきっと児童虐待を受けていたのかもしれない。」




「花鈴ちゃんは、罪に問われるかもしれないってことなのか?


それに…花鈴ちゃんの家庭はどうなっていたんだ?」




「近所の聞き込みからだと、評判はかなり悪かった。


夫婦の評判は悪かったけど、花鈴ちゃんのことを悪く言う人は誰もいなかった。



むしろ、近隣の人は花鈴ちゃんを褒めていたくらいだから。



花鈴ちゃんは心優しい子だって。



『何があったのか、分からないけど、花鈴ちゃんを、守ってほしい。』



近隣の人は、みんなそう口にしていた。」




大和は、そう言葉にしてから拳を握りしめた。




「大和、花鈴ちゃんはここを退院したらどうなるんだ?」




「保護観察がつくか、最悪…逮捕か…。


警察としては、花鈴ちゃんが詳しいことを話してくれない限りは、なんとも言えないんだ。


ただ、俺たちは彼女を守りたいとも思っている。これだけの大きなストレスがかかって無理に話せとも言えないんだ。


まだ16歳だしな…。」



16歳の彼女は、まだ心も考えも未熟であって正当な判断は難しいだろう。



だからこそ、大和も頭を抱えているわけであって未熟な彼女にどうしたらいいのか分からなくなっている状態なんだよな。



だけど、正当防衛で自分自身や母親を守るために行動したとしたら、花鈴ちゃんを助けるのが俺達の指名じゃないのか?



医者としても、警察官としても。
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