あなたに夢中
「その後、嫌がらせはどうなりましたか?」

唐突に切り出された話に驚いたものの、ずっと気にかけてくれていたのだと思うとうれしい。
あれから坂本さんは渡辺君を意識してか、仕事を押しつけてこなくなった。
まだ私たちが付き合っているのではないかと疑っているようだけど、追及されるようなことはないし、藤井さんとつるんで陰口を叩くようなこともない。

「心配してくれてありがとう。なにもないから安心して」
「そうですか。それはよかったです」

渡辺君は安堵したように笑みを浮かべる。

「あの、ひとつ聞いてもいい?」
「はい。なんですか?」
「渡辺君はどうして総務部に配属されたの?」

職場に関する話の流れにのって、この前カフェで聞きそびれてしまったことを尋ねる。

「いろいろな部署で経験を積んだ方がいいと思ったからです。来年の四月には経理部、その次は営業部に異動する予定です」
「そうなんだ」

渡辺君はすでに次期社長になるという将来をきちんと見据えている。
年下なのに私よりしっかりしている彼を見て、年の差を気にしていた自分を恥ずかしく思った。
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