あなたに夢中

あなたに夢中

渡辺君がハンドルを握って笑みを浮かべる。

「俺が直輝と兄弟だと知って驚きましたか?」
「うん。とても。いろいろと手配してくれてありがとう」
「どういたしまして」

NAOKIと対面を果たし、名残惜しくライブ会場を後にした私は今、渡辺君が運転する車の助手席に座っている。

「佳乃さん。この後、時間ありますか?」
「うん」
「だったら、これからイルミネーションを見に横浜に行きませんか?」

今の時刻は午後七時を過ぎたばかり。
都内から横浜までどれくらい時間がかかるのかわからないけれど、渡辺君が運転する車でドライブできるのはうれしいし、クリスマスイブにイルミネーションを見られるなんてロマンチックだ。

「うん。行きたい」

二度目の誘いを断る理由などなく、コクリとうなずく。

「よかった。じゃあ、横浜に向かいますね」
「お願いします」

急遽決まった横浜行きに心を躍らせていると、信号が赤になり車が止まる。

「聞いてもいいですか?」
「なに?」
「佳乃さんは直輝のどこに惹かれたんですか?」

渡辺君が真面目な顔で尋ねてくる。
もう、NAOKI推しだと隠す必要はないと口を開く。

「一生懸命に踊る姿かな。仕事や人間関係がうまくいかなくて落ち込んでいたときに、先輩グループのバックで踊るNAOKIをテレビで見かけたの。NAOKIを応援しているときは嫌なことを忘れられるし、明日からまたがんばろうって元気になれる」
「そうですか」
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