正反対な二人なのに
私立、葉月学園。
昼休み、屋上には一人の少女が人の沢山居る校庭を眺めていた。


「はぁ~~…」


彼女の名前は如月 苺(きさらぎ いちご)。数日前にこの学校に転入してきた生徒である。
そんな彼女には、一つの悩みがあった。


「お弁当一人…哀しい」


友達が一人もできない事である。
そもそも新学期が始まって結構時間が経った後での入学だ、グループなどできているのは当たり前で友達など作るのは至難の業。
それはわかっていたのに転入してきたのは自分だ、辛くともちゃんと登校しなければいけない。


「普通こう言う転入生って注目されるものじゃないの!?」


注目されたはされたが、それにキチンと答えられなかったのは彼女である。
如月 苺は、人と話すことがあまり得意ではなかった。


「うぅ……」


話すのは好きだ。なのにどうしてか、人を前にすると言葉が出てこない時がある。
そうしていると離れていってしまうのである。

はぁ、と大きなため息を吐いた。
食べ終わった弁当箱の箱を閉め、いれていた巾着に戻した。
その時のこと。


「───おや、あなたは」


いつの間にか近づいてきていたのか、一人の男子生徒が彼女に気がついた。


「あっ!あ、の時の!」


「はい。佐薙 硝(さなぎ しょう)と申します」


「生徒会長さん…!」


「覚えて貰えて光栄です」


硝は転入生初日、彼女を校舎の説明をした生徒会長だ。
不思議とすらすらと出てくる言葉に、自分でも違和感を覚える。
当然のように彼女の隣に腰掛けた佐薙は、また話題を振った。


「教室で見かけなかったので、探しに来ました」


「あっ、えーっと…校則違反でもしちゃいました…?」


「まさか。ただ、あなたと話したくてきましたよ」


「は、話したい…!?友達になりたい、って事ですか!?」


「はは、どうして敬語に?緊張しないで大丈夫です。取って食べたりしませんので、ね」


それはあなたもなのでは、と思ったが口には出さなかった。
人当たりの良い笑顔と、優しい声色。そして何よりも久しぶりに家族と教師以外と話した嬉しさが、彼女を安心させていた。


「わ、私、如月 苺って言います!いや、言うんだ!」


「覚えていますよ」


「えっ、あっ、光栄です!」


「だから、敬語は大丈夫ですって」


ふふ。と彼が笑う。
釣られて、彼女も笑った。





「どーしよ……」


場面は変わり。一人の男子生徒が寮の自室で悩んでいた。


「どうか致しましたか?」


「や、お前の格好して女子生徒と仲良くなっちゃった」


「……またですか?全く…やめてくださいと言っているでしょう?」


だってバレないんだもん。佐薙 交(さなぎ こう)がそう言い訳をした。


「それに……可愛かったんだもん」


彼女は知らない。
今日、仲良くなった人物が硝ではなく交だったなんて、知る由もない。
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