モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
優香side
紅いベルベットのカーテンで仕切られたVIP席。

会員制の高級クラブで豪遊できるほど、うちは裕福ではなくなったというのに、一つ上の義姉、一華の浪費癖は変わらない。

「今日は、誕生日なのよ。優香、その不機嫌そうな顔やめてくれない」

彼女のヒモ男達が、ニヤニヤと笑っている。

「優香さんも一緒に楽しもうよ」

「結構です。一華お義姉さん、うちはもう昔とは違うの。こんな無駄遣いやめて」

「無駄遣いですって…」

彼女が飲んでいた白ワインが、パシャリと顔にかけられ、滴る液体を手のひらで拭う。

「相続した財産が使いきれないほどあるのよ。ほら…」

彼女は自分の持っていた高級なバックから、帯のついた束を出して、帯を切るとその場で撒き出した。

我先にと、それを払い集めるヒモ男達を見て、楽しんでいる一華。

そんなことをしているから、相続した財産も、あっという間になくなりそうだというのにと、頭が痛くなる。

私は、床に落ちているお金を集め、男達が集めたお金も奪おうとするが、手を高く挙げられて奪えることもできずにいる姿を、一華は大笑いしている。

一万でも大事だというのに、家の内情を知らされていないのだろうかと思う。
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