モウセンゴケ〜甘い香りに誘われて
鷹也side
月に何回か息抜きに使う高級バーは、高いお金を払っているだけあり、人の素性には、硬く口をつぐみ、静かで落ち着きのある店だ。

だが、今日は、珍客がVIPルームへ入って行き、騒ぎだして静かに過ごすこともできないと、苛立っていた。

そこへ、奥のVIPルームから疲れた表情をした女が出てきて、一つ開けた隣の席に項垂れるように腰掛けたのだ。

やたらとテンションの高い女といた、イヤイヤな表情でいた女だった。

とびっきりの美人ではないが、横顔はチャーミングで小さな口と少し低い鼻、目だけは大きく、まるでリスのような小さな顔だち。だが、体つきはグラマーで、久々に自分から女を抱きたいと思うほどのタイプの女だった。

バーテンダーに俺と同じものを頼む辺り、俺に興味があり、わざと席を一つ離して座ったのかと思った。

だが、横を向くと、彼女は俺には興味などないらしく、一気に強い酒を飲み干していた。

その様子はやけをおこしているようで、なぜだが心配になり声をかけていた。

「隣いいか?」

「いいけど、それちょうだい」

俺の飲みさしのグラスを奪って飲み出し、こちらが慌てる。

「おいおい、一気に飲むと意識飛ぶからやめとけ」
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