エルサレムの仮面の王と魔物の吟遊詩人

若き王と魔物の吟遊詩人

「魔物のシオン 一つ聞きたい 私が倒れ、力尽きたら誰が
エルサレムの王国を守れるだろうか?」
銀の仮面の王が問う 名君と誉高いボードワン4世 若きまだ二十歳前
「‥…聞きたいのですか?」
「本当は あの幼い頃に 私の死病、重い病を知ってたくせに 
それを秘密にしていたから」朗らかな笑い声を含んだ声 

「はい、そうですね陛下 
幼くても賢くて‥私は貴方が幼い時から御傍に居ましたから」シオンの微笑

そう、とても美しい子供だった 王子 本が大好きな
そっと魔物で吟遊詩人のシオンは思い出す。

彼、ボードワン4世 
病の中で十六歳で初陣 巨大な敵のサラデイーンに一度目は勝利した

今も昔も皆に慕われる畏き王

あのイスラムの英雄 サラーフ・サッデーン(サラデイン)と戦い渡り合う王
仮面の下の瞳を見つめて 微笑するシオン

「シオンは 先の未来が視える」「はい、少しだけですけどね」
「未来が聞きたい」

「‥では 獅子の心を持つ 
英雄と後の世に謡われる勇猛たるイングランドの王達がやってくる
三人の王達が 闘い渡り合う」
「イングランドのリチャード王達 
しかし、一人は他の巨大な脅威の敵を打ち払いますが
途中の地で 死の乙女、水の乙女に抱かれるので此処には来れませんが 二人が来る 
所縁ある仏蘭西の尊厳王(オーギュスト)」
リュートを片手にそっと謡ってみせるシオン

「これは秘密ですよ」「シオンは私の死期も知ってる」

「…‥秘密です 王」  
「どうぞご無理をされずに今は休養されてくださいませ 
彼等が来るのはまだまだ先です 休める時にはどうか お体は辛いでしょう」

「会ってみたいものだが‥私が去った後か」その声、悲哀に満ちた声
そうして滅びゆく王国の延命‥

シオンが穏やかに優しい口調で 

「王国の者達 臣下のレーモン様達 家臣達 王国の騎士、兵士達に 
貴方様を騎士団、ヨハネ騎士団にテンプル騎士団の者達も慕い案じてますので 
どうか王様」
「辛くないと言えば噓になる だが、私を支えてくれる者達 守らねばならぬ者達に
この地が」
「はい 王様」微笑するシオン
「薬湯に甘いお茶をお持ちしましょう ボードワン4世陛下」

彼の裁量に 守ってゆく者達に支えられて エルサレムの王国
この地は守られていたが‥ そんな王、彼が旅立ったのは まだ二十歳半ば‥。
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