古本屋の魔女と 孤独の王子様
店を出て、言葉少なに夜道を駅まで肩を並べて歩く。
楽しかった時間が終わってしまう…
俺は少しの寂しさを抱え、どうしたって足取りが重くなる。
「…家がここから近くなんだ。もう時間も遅い、車で送るから着いて来てくれないか…?」
ついそう言って、少しでも長く一緒にいたいと足掻いてしまう。
「大丈夫です…電車で帰りますから。あの…もうここら辺で…。」
そう言って帰ろうとする彼女の言葉を遮り、
「じゃあ、駅まで送ってく。」
と、半ば強引に彼女の手を取り歩こうとする。
「…ッ痛っ!」
彼女が小さな声を上げるから、俺は掴んだ手をバッと離す。
「どうした?手が痛いのか?」
俺は咄嗟に手の甲を隠そうとする彼女の手首をとって、明るいコンビニまで、強引に引っ張って行く。
「…あの、大丈夫ですから…。」
彼女は必死に抵抗してくるが、コンビニの明るい照明の下で、隠されている袖を強引にまくし上げて手の甲を見る。真っ赤に腫れ上がっている。慌てて反対も見ると同じように真っ赤だった…。
火傷⁈…いや…紫外線アレルギーだ。
そう思った途端、急にドクンと胸が痛む。
『私、太陽に当たると溶けて無くなっちゃうの。』
不意に頭の中に、子供の頃の彼女の声が再生される。
「明日朝イチで病院へ行った方がいい。…俺が、君をあの島へ行かせたせいだ…。」
気が動転して、そう口走る。
「違います!私がケアを怠ったせいです。」
彼女がバッと自分の手を引っ張り、俺から逃れるように踵を返して走り出す。
「……ッ日向!…椎名…日向。待ってくれ!」
俺は咄嗟にそう、名前を呼ぶ。
彼女の足がピタッと止まる。
…2度とその名を呼ぶつもりはなかった。
このまま…別れて…彼女を解放するつもりだったのに…。
俺はゆっくりと固まる彼女に近付き、
「日向…俺の事、覚えてるか?」
ビクッと肩を揺らし固まる日向の前に周り、顔を見る。
俯いた日向は、明らかに動揺しているように見える。
「副社長さん。明日、病院に行きますから…気にしないで下さい。失礼します…!」
これ以上踏み込むなと言うように、日向は俺を拒むように早口にそう言って、足早に走り去る。
俺はその場に立ちすくんで…その背中を小さくなるまで見送った。
楽しかった時間が終わってしまう…
俺は少しの寂しさを抱え、どうしたって足取りが重くなる。
「…家がここから近くなんだ。もう時間も遅い、車で送るから着いて来てくれないか…?」
ついそう言って、少しでも長く一緒にいたいと足掻いてしまう。
「大丈夫です…電車で帰りますから。あの…もうここら辺で…。」
そう言って帰ろうとする彼女の言葉を遮り、
「じゃあ、駅まで送ってく。」
と、半ば強引に彼女の手を取り歩こうとする。
「…ッ痛っ!」
彼女が小さな声を上げるから、俺は掴んだ手をバッと離す。
「どうした?手が痛いのか?」
俺は咄嗟に手の甲を隠そうとする彼女の手首をとって、明るいコンビニまで、強引に引っ張って行く。
「…あの、大丈夫ですから…。」
彼女は必死に抵抗してくるが、コンビニの明るい照明の下で、隠されている袖を強引にまくし上げて手の甲を見る。真っ赤に腫れ上がっている。慌てて反対も見ると同じように真っ赤だった…。
火傷⁈…いや…紫外線アレルギーだ。
そう思った途端、急にドクンと胸が痛む。
『私、太陽に当たると溶けて無くなっちゃうの。』
不意に頭の中に、子供の頃の彼女の声が再生される。
「明日朝イチで病院へ行った方がいい。…俺が、君をあの島へ行かせたせいだ…。」
気が動転して、そう口走る。
「違います!私がケアを怠ったせいです。」
彼女がバッと自分の手を引っ張り、俺から逃れるように踵を返して走り出す。
「……ッ日向!…椎名…日向。待ってくれ!」
俺は咄嗟にそう、名前を呼ぶ。
彼女の足がピタッと止まる。
…2度とその名を呼ぶつもりはなかった。
このまま…別れて…彼女を解放するつもりだったのに…。
俺はゆっくりと固まる彼女に近付き、
「日向…俺の事、覚えてるか?」
ビクッと肩を揺らし固まる日向の前に周り、顔を見る。
俯いた日向は、明らかに動揺しているように見える。
「副社長さん。明日、病院に行きますから…気にしないで下さい。失礼します…!」
これ以上踏み込むなと言うように、日向は俺を拒むように早口にそう言って、足早に走り去る。
俺はその場に立ちすくんで…その背中を小さくなるまで見送った。